2017年04月02日

フィラリア予防について

こんにちは。院長の千葉です。

今年もフィラリア予防の時期がきました。今日はフィラリア症とその予防についてお話します。

フィラリア症とは

 フィラリアは、線虫という寄生虫の仲間で、蚊を媒介して犬の血液中に入り込み、心臓内に寄生します。蚊が犬を刺すと、フィラリアの幼虫が皮膚から侵入し、皮下や筋肉で成長を2,3ヶ月続けます。その後に血管内に侵入して、心臓へ寄生します。そこで更に成長して、3,4ヶ月後には子供(ミクロフィラリア)をたくさん放出し、血液中に充満した状態になります。成長したフィラリア虫体が犬の心臓(正確には動脈ですが)に溜まり、血液が上手く流れなくなり、心臓に負担がかかるという病気です。
 フィラリア症の主な症状は、咳、食欲不振、息切れ、運動不耐性、腹水による腹囲膨満、四肢のむくみが挙げられ、最終的には心不全、肝不全、腎不全で亡くなってしまう非常に怖い病気です。
 ミクロフィラリアを持った犬を蚊が刺す➡蚊の中で幼虫になる➡他の子に移る、という流れでどんどん感染は広がってしまいます。心臓にたくさん留まって、血流の邪魔をしてから症状が出るので、症状が出た頃にはかなり進行しています。

 日本でフィラリア症の予防が広まり20年近くになります。古いデータですが、2000年の調査でも予防の普及率は55%程度であり、ワンちゃんの35%がフィラリアに感染しているという報告があります。また、東日本大震災で保護されたたくさんのワンちゃん達の約半数がフィラリアに感染していたそうです。


室内飼いでも予防は必要です

 室内飼育の場合、蚊に刺されないように『蚊取り線香』や『虫除けスプレー』などで工夫されている方もいらっしゃると思います。100%蚊に刺されないのであれば良いのですが、私たちも室内で蚊に刺されることがあるので、

「うちは、室内飼育だから大丈夫!」という考え方は非常に危険です。たまに獣医師の中にもそういう考えの方もいます。。。私の経験でも室内飼いのワンちゃんでもフィラリアに感染していたコを見たことがあります。
 屋外飼育のワンちゃんで感染していないコもいますが、それはラッキーだったということではなく、ご近所の皆さんがしっかり予防をしてくれた賜物です。周りの方に感謝してください。ご近所付き合いは非常に重要なことがわかります。もしかしたら、あなたのおうちのワンちゃんが感染源になって近所のワンちゃんに迷惑をかけてしまうかもしれません。。。

フィラリア症は命に関わる疾患です。
確実な方法でしっかり予防してあげましょう!


ちなみにフィラリア症にかかると治療が大変でワンちゃんの体への負担と通院の手間とお金がかかってしまいます。

フィラリア予防薬について

 「予防薬」と呼ばれる事が多いですが、実は駆虫薬です。フィラリアの幼虫が皮下や筋肉の中で成長している時を狙って、幼虫を攻撃する薬となります。感染してから血液に出てくるまでは2,3ヶ月かかりますので、それまでの間に投与します。
 予防薬を一ヶ月に一回与えるのですが、一ヶ月効果が続く薬ではなく、一ヶ月に一回、筋肉・皮膚で成長している幼虫を倒します。つまり、この薬は「感染後、皮下・筋肉内の幼虫を倒し、症状を出させる段階まで進ませない」目的で投薬します。

フィラリア検査について

 フィラリアに感染してある程度時間が経つと、成長したフィラリアが赤ちゃんを産み、血液中にフィラリア幼虫がいる可能性が出てきます。先程のお話のように、フィラリア予防薬は、フィラリア幼虫を殺すお薬です。血液中にフィラリア幼虫が沢山いる状態でワンちゃんがお薬を飲むと、血液中の幼虫が一気に死滅して、その死骸で血管が詰まってしまい、肺動脈血栓塞栓症、腎不全などにかかり、最悪死亡してしまうことがあります。それだけではなく、フィラリアの死骸に対して過剰なアレルギー反応が出て、アナフィラキシーショックを起こしてしまうこともあり、大変危険です。

このように、フィラリアに感染していることを知らないまま予防薬を飲ませるのは、とても危険です。

だから毎年、予防薬を飲ませ始める前には、血液検査でフィラリアに感染していないことを確かめる必要があるというわけなんですね。

予防薬を飲ませていても、シーズン毎に毎年検査が必要です。

フィラリアのお薬を必要な期間にわたり確実に飲んでいれば、確実に予防できているはずです。
 しかし、『フィラリア予防をしている100頭のワンちゃんのうち、適切にお薬が飲めていた子は41頭しかいなかった』という大規模な調査データが発表されています。

なぜならば、

・予防の期間が不適切だった
・投薬の間隔が不適切だった
・知らないところでワンちゃんが薬を吐き出してしまっていた
・お腹を壊していて薬の成分がきちんと吸収されなかった

など、毎月1回予防薬を飲ませていたつもりでも、薬の効果が十分発揮されず、フィラリアをしっかり駆虫できないことがあるからです。また、確実なフィラリア予防ができていないケースも少なくありません。

「蚊が出ている間の夏だけ予防薬を飲ませれば大丈夫」と思っていたら、それは勘違いです!

フィラリア予防が必要な時期は、蚊が飛び始めた1ヵ月後から、蚊がいなくなった1ヵ月後まで。地域によって異なりますが、だいたい5月〜11月末までの毎月1回お薬を飲ませる必要があります。


最後の月まで、きちんとお薬を飲ませられましたか?最後の月までお薬を飲ませられなかった場合、翌年までの間にフィラリアの感染が進んでしまっているかもしれません。予防できている「つもり」のまま、お薬を飲ませるのは大変危険です。

安心してお薬を飲ませられるかどうか、血液検査で毎年チェックしてあげてくださいね。

例外的にフィラリア検査が不要な場合

1.通年予防をしている場合
2.生後6ヵ月未満もしくは冬生まれの子犬の場合

この2つの場合は、例外的に検査する必要がありません。

 予防が必要な時期だけではなく、1年間を通して毎月フィラリア予防薬を飲み続けている場合は、フィラリアに感染したとしても、毎月きっちり駆虫していれば、フィラリアが成長する可能性はゼロです。そのため、血液検査でフィラリア感染を確かめる必要はなく、安心してそのままお薬を飲み続けられます。

 飼い始めたばかりの子犬で、フィラリア感染が進んでいる可能性がない場合は、血液検査をせずにフィラリア予防薬を飲み始めても大丈夫です。

なぜ、検査が不要なのが生後6ヵ月までかというと、

フィラリアに感染したままお薬を飲ませるのが危険になる時期
血液検査で感染しているかどうかを判定できるようになる時期

この2つの時期が、どちらもフィラリアに感染した約6ヵ月後~だからです。
つまり、生後6ヵ月未満の子犬は、血液検査でフィラリア感染を確かめることができないし、万が一感染していたとしても薬を飲ませることに危険はありません。また、12月~3月など蚊がいない冬の間に生まれた子犬の場合は、蚊が出始めてから6ヵ月以内に予防を始めるのであれば、同様の理由で生後6ヵ月を過ぎていても検査の必要がありません。ただし、2年目からは毎年きちんと検査を受けてくださいね。

フィラリア症の治療について

フィラリア症の治療方法はいろいろありますが、それぞれリスクを伴います。

①外科的な摘出術

 頚部の血管から細い器具を入れて、心臓内のフィラリア成虫を直接外科的に摘出します。摘出時に死亡したフィラリアの断片は、生きているフィラリア以上にアナフィラキシーショックや血栓塞栓症などの重篤な症状を起こすことが知られています。『大静脈症候群』を起こし緊急の場合や、大量のフィラリア成虫が寄生している場合以外に、外科的に摘出することはまずありませんが、かなりリスクの高い治療法です。

*大静脈症候群・・・犬フィラリア症の急性型であり、突発する赤色尿(赤ブドウ酒様~コーヒー様)、黄疸、元気や食欲の減退、貧血(可視粘膜の蒼白化)、腹囲膨満(腹水貯留)、虚脱などが主症状です。フィラリアの成虫が右心房に栓塞したり、特異的な寄生状態によって、重度の循環障害をひきおこします。この重度の循環障害によって急性肝不全や急性腎不全を引き起こします。同時に赤血球自体が脆弱化して、また虫体や異常な心臓の弁膜運動による血流の乱れにより、赤血球が破壊され、溶血が生じます。


②成虫駆虫薬
 心臓内で増殖してしまったフィラリア成虫を駆除する薬剤です。駆除された成虫は肺などに詰まり、問題となります。手術と同様に、死亡したフィラリアやその断片が重篤な症状を起こす可能性があります。現在この成虫駆虫薬は製造中止となっています。

③予防薬の長期投与
 通常のフィラリア予防の薬を、一年を通して投薬使用します。数年かけて成虫が消えていくのくを待つ方法です。成虫が少なく、フィラリア症の症状が出ていない場合の選択肢です。投与後に発咳、食欲不振、元気がなくなるなどの副作用が出ることがあるので、ワンちゃんの調子をみながら投薬量や支持療法の内容を決めます。
この方法は危険性の比較的低い治療法といえます。
 

まとめ

 このようにフィラリア症は未だに流行している病気で、一度かかってしまうと治療が難しく、リスクを伴い、時間がかかります。そのため、予防がとても重要になります。予防をしっかりすれば、感染リスクをゼロにすることができるため、一番合理的でワンちゃんの体にも優しく、飼い主さんの通院の手間や経済的負担を最小限にすることが可能です。

今年もフィラリア予防をよろしくお願いいたします!


posted by aro at 23:06| 宮城 ☁| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする