今日は猫のストレス問題とフェリウェイという製品についてお話をしたいと思います。
長文になりそうな気配ですが、暇つぶしに読んでみてください。。。
本来の猫のライフスタイルと猫のストレス問題
本来の猫のライフスタイルとは
①外での生活を好む傾向がある
②生活に必要な環境へ自由に行き来する
③ストレスになる状況を避ける
④プライバシーを保つ
⑤慣的な行動をとる
という特徴があります。
では、猫がストレスを感じやすい環境とはどのような環境でしょうか?
①外出が多い(車などでの移動)
②来客が多い
③生活環境の変化(引っ越し、新しい家具の導入、新しいペットを迎え入れた)
④住環境の変化(入院、ペットホテル)
⑤騒音や振動(音楽、雷、花火、鉄道、トラックの行き来)
⑥多頭飼育(他の猫ちゃんたちとの共同生活)
など、人間との生活の共有や多頭飼育により、本来の猫のライフスタイルを妨げいる可能性があります。
お宅の猫ちゃんに当てはまることはないでしょうか?
我々飼い主にできること
人間と一緒に暮らす現代の生活環境の中で、猫ちゃんが何らかのストレスを受けてしまうことは、避けられないことかもしれません。そのため、できるだけストレスの少ない環境作りをしてあげることが大切です。
あろう動物病院は、猫ちゃんの健康管理と合わせて、生活環境にも気を配っていきたいと考えております。
*ストレスをかけないために猫を放し飼いにして自由に飼えばいいのでは?という意見もあると思いますが、当院では交通事故、喧嘩による外傷、感染症の問題、糞尿などの地域住民とのトラブル、地域猫問題、生態系への影響などの観点から室内飼育をお薦めしております。猫ちゃんの行動を制御すること自体ストレスを与えてしまうことになる可能性があるかもしれませんが、猫ちゃんの健康を守りつつ、ストレス問題への配慮、人間社会との共生のお手伝いをしたいと考えています。
また、不妊去勢手術や大事な猫ちゃんの健康と飼い主様の健康を守るためにもワクチン接種、ノミダニ駆除、消化管寄生虫の予防をお薦めしています。飼い主様と猫ちゃんのライフスタイルに合わせた予防プログラムを提案いたしますので、お気軽にご相談ください。
猫の飼養基準は動物愛護管理法により定められているので、参考までにご覧ください↓
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/index.html
そこで、今回はフェリウェイという製品についてご紹介したいと思います。
①フェリウェイ(猫用フェイシャルホルモン製品)という製品について
フェリウェイとは
フェリウェイとは猫の頬から分泌されるフェイシャルフェロモンF3に注目して開発された、フェロモン類縁化合物製剤(猫のフェイシャルフェロモンF3に分子構造を似せて合成した製剤)です。
フェロモンとは虫や動物の体から自然に分泌される化学物質であり、動物同士のコミュニケーションに用いられます。フェロモンは同じ種の動物にしか反応しないので、フェリウェイを散布しても、人間はかすかな香りを感じるだけです。スプレータイプと拡散タイプの2種類が販売されています。
スプレータイプ

拡散タイプ

フェロモンとは
猫のフェロモンは口の周り、乳腺、肛門腺、尾の付け根、泌尿生殖器周辺から分泌されており、特に口の周りから出るフェロモンをフェイシャルフェロモンと呼びます。フェイシャルフェロモンは猫に安心感を与え、情動を落ち着かせる効果があると考えれています。フェリウェイに含まれるF3というフェイシャルフェロモンは頬のこすりつけなどから環境中に分泌されるフェロモンです。頬を柱や人間の足に擦りつけるのは、慣れ親しんでいることを示すための行為といわれています。
フェリウェイの狙いと効果
猫の問題行動の多くはテリトリーの主張やストレスに対抗するために行われます。具体的には猫同士の喧嘩、尿マーキング、過剰な爪とぎ、隠れるといった行動です。フェリウェイを散布することで、フェロモンを満たして尿マーキングなどの問題行動を抑えます。そのため多頭飼いや、外猫の存在によるストレス、新しい環境への適応などに効果が期待できます。
行動学に関する一番の問題は治療に時間がかかり効果が実感しにくいということです。フェリウェイを使用してその日に効果が現れるわけではなく、猫が変化に気がつきストレスレベルが下がることで効果が現れるために時間がかかります。また、行動学の治療は他の病気の除外(病気が原因で行動に変化がみられる場合もあるため)、飼育環境の改善や猫が感じているフラストレーションの回避も重要であるため、総合的な判断と改善方針を決めることが必要です。劇的な改善が実感できないため、治療を途中であきらめてしまう方もいらっしゃいますが、気長に見守ってあげることが重要です。
尿マーキングへの効果
スプレータイプのフェリウェイを使用した研究論文では75〜97%の猫で改善が見られ、完全にマーキング行動をしなくなった猫は33〜96%であったという報告論文があります。また、拡散器型のフェリウェイの効果を測定した研究では尿スプレーの回数が70%減少したと報告しています。
過剰な爪とぎへの効果
猫の爪とぎは実際に爪を鋭くするという目的以外にも、ストレス解消、マーキング(肉球からのフェロモン)のために行います。爪とぎは猫の正常な行動なので完全になくすことはできません。ある研究では、いろいろな所で爪とぎをする猫53匹に、最適な場所に爪とぎ板を設置し、それ以外の場所で爪とぎをしたときはスプレータイプのフェリウェイを使用しました。その結果1日平均20回以上の爪とぎがみられた猫が、11日目には殆どなくなったと報告されています。
フェリウェイのその他の使い方
①車での移動:車での移動の際にキャリーケースにスプレーすると、移動中の嘔吐、排泄、鳴き声、興奮等が少なくなったという報告があります。
②特発性膀胱炎:ストレスによって悪化する特発性膀胱炎では、膀胱炎症状や改善までの日数が減少したという報告があります。
③動物病院での使用:ケージのタオルにフェリウェイを使用すると、グルーミングや食事量が増えたという報告があります。
当院では、猫の来院ストレスをなるべく軽減するために猫診察室で拡散型のフェリウェイを使用しています。
フェリウェイを使うときの注意点
問題行動を起こす猫ちゃんに一般的にいえることですが、その行動が「環境に問題があるために起こしている行動」なのか、を見極めること重要です。飼育環境に問題がある場合はフェウェイだけでは効果が上がりません。同時に飼育環境の改善が必要となってきます。
まとめ
フェリウェイは様々な状況で使える可能性をもっています。安全性が高く、取り入れやすい反面、正しく使わないと効果は期待できません。獣医師の診察とカウンセリングによる問題行動へアプローチしていくことをお勧めします。今後、どのような病気や問題行動に、どれくらいの効果が期待できるか報告を待ちたいと思います。飼い主様に有益な情報を入手したら、当ブログで続編をやりたいと思います。
当院では、動物たちの健康と飼い主様と動物たちが幸せな生活が送れる手助けをしたいと考えております。
詳細についてはお気軽にスタッフまでお問い合わせください。
次回予告
次回は、抗炎症効果のあるサプリメントについて書きたいと思います。老化と炎症についても書きたいと思います。
最後まで、お付き合いいただきましてありがとうございました!
ラベル:大崎市,動物病院,古川 猫、ストレス
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